7 7月
2021

戯れあい※R-18

 しんみりとした体育館の倉庫で動くかげが二つ。体育館マットを背に預け横たわる仙道の上に跨り、荒い呼吸を整える。肺に入る空気がひんやりとして冷たい。だけど、身体は火が点いたように熱くて、その違いがまた気持ちいい。
「指…入れっぞ」
「うん…」
 いつの間にか気づいてみればこんなことになっていて、指を唾液で十分に濡らし仙道の後ろへと指を運ぶ。
 肌を重ねるのは一体何ヶ月ぶりだろうか。仙道はすでに進路は決まっていてゆとりがあったものの、福田にはそれがなかった。バスケを愛するが故に福田もバスケ推薦を狙い、より一層バスケに熱を入れた。その間二人の関係は、特に身体の関係は一切なく、気づけばこんな時期になっていた。仙道の白い肌も、それから季節柄吐く息が白くなるのも。何もかもが懐かしく愛しい。だから余計に逸る気持ちが強くて、一気に2本指を入れる。何ヶ月も進入がなかったそこは引きつき、それでも窮屈そうに福田を受け入れた。
 ゆっくりと中で動かすと、すぐに仙道の口から喘ぎが洩れた。
「んん…っ」
 いやいやをするように仙道が首を横に振る。久々の快感は少しの刺激でさえ仙道の身体を揺るがす。男同士とはいえど好きな人がよがる姿を見ると、すぐにでも中に入って更によがらせたくなる。だけどしっかりと慣らさないと、後に仙道が大変な目に遭うこともよく分かっている。
 むしろ仙道が、というよりは福田がといった方が良いのかもしれない。初めて肌をあわせたときは無茶をしたものだ。どうしたら良いのか分からなくて、ただ欲望のままに抱いていた感じ。が、次の朝。仙道は立つことは愚か、起き上がることさえ出来ないほどに疲れきっていて福田は頭を抱えた。当の本人は楽しそうに笑っていたが。それ以降きちんと慣らさなければならない、と学習した福田は丁寧に慣らすことをまず一に心がけた。
 仙道の良い場所はよく知っているから、そこを集中的に攻めていく。なんでこんなことをしてるんだろうか、と思う。久々に触れ合いたかったのは確かだ。登校日の今日。ホームルームを終えた仙道が「体育館へ行こう」などと言い出したのだ。何かを企んでいるような笑顔から、期待はした。そしてその期待は見事に叶ったのだが、まさかここまで展開するとは思ってもみなかった。どうしてだろうか。指の動きを止めることなく、ふと考える。喘ぎを堪え仙道が笑う。
「なんで…俺たち…こんなことっ…してんだろ」
 ただ慰め合うために、ちょっと抱き合ってただけなのにと続ける仙道に、福田は敢えて無視をし、更に強くそこを刺激した。
 声だけではもう自身をコントロールしきれなくなったようだ。自ら腰を揺らしながら、ひたすらに福田の侵入を請う。
 それだ、と福田は思う。
 仙道が全て悪いんだ、と福田は思っている。その表情も、声も動きも。何もかもが自分を狂わせるんだ。誘ってない、と仙道は言うだろう。しかしどう見ても誘っているようにしか見えない。だから仙道が悪いんだ。
 目が合う。
 すると仙道は上半身だけを起こしかけ、片腕だけで上半身を支えると福田の前に手を伸ばす。はちきれんばかりに大きくなったそこを、ひんやりとした感触が触れる。驚いて、顔を見る。表情は暗がりの部屋のせいでほとんど見えない。が、白い歯が見えた。笑っている。
「俺だけじゃ悪いからさ」
 ほら、やっぱりお前が誘ってるんだ。
 要らないと言って再び仙道を押し倒す。これ以上仙道に好きにさせたくなかったからだ。自分のペースを崩されることを極端に嫌う福田らしいそれに、仙道は一瞬だけ笑みを浮かべた。福田も分かっている。仙道に壊されたものは今回だけのことではなく、常に仙道にはペースを崩され焦らされていることを。でもそれを認めることが嫌で、指を引き抜くとまだ慣らしきれていないそこに自身を押し込んだ。
「あああぁ…っ」
 仙道が仰け反る。首筋がピンと張るその様は痛々しそうに見え、もっと慣らしておくべきだったかだろうかと後悔したが、仙道がすぐに背中に縋り付くように両腕を回して更に奥へと進みこませる。久々、ということが悪いのか。少し動いただけで福田はすぐに達してしまった。熱い白濁を全て仙道の中に注ぎ込むと、ゆっくりと中から出る。
「この感触好きだな…」
 仙道はいつも言う。自分の中で精液を放たれた感じが好きでならない、と。自分の中に出されたことがない為、一体どのようなものなのかは分からない。もちろん味わいたいとは思わないが、嬉しいなとは思う。けれどもこれ以上は最初に決めたとおり出来ない。若気の至りかどうしても羽目を外してしまいがちな二人の行為は、自宅以外ではある意味危険行為。名残惜しくはあるが言った。
「もうやんねぇぞ…」
「あはは、はいはい」
 残念そうに笑う仙道が小さく見えた。と同時に福田は深い溜息をつく。そんな笑顔を見せ付けられて、ここで放っておくわけにはいかないじゃないか。まだ達していない仙道は自ら扱きあげようと、自身に手を伸ばそうとしている。その手を取り、口付ける。乱した前髪の隙間から目が見えた。潤んで今にも泣き出しそうなその切れ長の目はやっぱり誘っているとしか思えない。
「俺がいるだろ」
 こんなクサイような台詞を言わせてしまうのも、やっぱり仙道のせいだ。少しばかりの苛立ちと、言葉では現しきれない複雑な思いを胸に、欲望に満ちたそこを口に含んだ。

End
第三者から見たらじゃれ合っているようにしか見えないからタイトルは「戯れ合い」

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