7 7月
2021

Blue Heaven※R-18

 流川のことを好きになってから、いつだってアイツのことばかり考えるようになった。男相手に、今何をしてるのか考えるオレは完璧に流川の虜。まぁ、バスケの時は別なんだけど。
 最初は想ってるだけで良いって思ってたよ。オレの一方的な気持ちを押し付けるのは良くない。だから我慢してたんだ。でも我慢って良くないな。我慢すればするだけ、今度は流川のことしか考えられなくなってしまう。我慢も限界にきたある日、オレは告った。お前が好きだと。多分その時は顔、真っ赤だったと思う。今までにオレから告るなんて事なかったから。ドキドキしながら流川の返事を待つ。どんな返事が返ってこようと、オレはそれを全て受け入れるつもりで。例え、それで拒絶されたとしても、それが流川の答えであれば嬉しいものだ。
 告られた流川は一瞬目を見開くと、きっぱりと言った。好きな奴がいるから付き合えねぇって。
 そうか。好きな子が…。ま、流川みたいなパっと見がバスケが恋人ですだなんて奴でも、この年頃になりゃ好きな子の一人や二人いたとしてもおかしくはない。誰が好きなのか訊いた。聞きたくねぇけど、聞きたくて仕方なかったんだ。
流川は真っすぐオレを見据えて一言。

「サクラギ」

桜木は赤木さんの妹にベタ惚れだから、叶わないかもしれねぇけど。流川はそう付け加えた。こんなに自発的に喋る流川は珍しい。
 そして、オレは流川の言葉を聞いて閃いた。それはあまりにも愚かな閃き。ついさっきまでは流川がどんな答えを出そうと、それを有り難く受け止めるつもりでいたのに今ではその案を流川に聞いてもらいたくてならない。思わず呆れて笑ってしまう。不審に思った流川の目には、こいつ壊れたんじゃないかっていう心配と呆れの色があった。ある意味、お察しの通りオレは壊れてるのかもしれない。

「桜木との関係が上手くいくまでで良いからさ、付き合おうよ…」
「…どういうことだ?」
「体だけの関係ってヤツ。ね、流川」

 自分でも馬鹿げた提案だと思った。恋愛が出来ないなら、せめて体だけの関係だけでもとせがむ。もしかしたら、体だけの関係を進めていくうちに流川の気持ちがこっちに傾くかもしれないじゃないか。そんな浅はかすぎるこの提案に流川は、のった。流川がなにを思って、オレの案にのったのかは分からない。それでも、なんとか流川との関係をこぎつけられたのは確かだ。
 それからオレと流川の関係は始まった。

「はっ…、るか…っ」

 流川を、もっと奥まで進んでこれるように足を開いて誘いをかける。そのため入りやすくなったのか、流川が一気に奥まで入ってきた。息がつまって頭を仰け反らし、シーツを掴む。

「あぁっ…」

 思わず発してしまった喘ぎ声に流川が反応したらしく、ぴくりと震えた。オレの顔を覗き込むように屈む。

「…大丈夫かよ」
「へへっ、大丈夫だよ。大丈夫だから、動いて」

 流川は体を起こすと、返事は言葉にせず腰を動かすことで返事を返してきた。そう、それで良いんだ。オレを見てくれてるだけで良いんだ。…って、なんかオレ女々しいな。だけど今はそんなことどうだって良い。今はとにかく流川との行為に集中することにした。
 緩やかだった流川の腰の動きは徐々に激しくなる。流川動きが激しくなるのは、かなり気持ち良くなったっていう証拠。
 オレは流川の首に両腕を回して、キスを求める。ゆっくり瞼を閉じ待つ。唇が落ちてきてすぐに舌が差し込まれる。オレも舌を絡ませた。絡み合う唾液が湿った音を洩らし、その音が耳に響く度、流川もオレも益々興奮していくのが分かる。貪るようなキスと激しい動きに、もう互いに限界を感じていて。唇を離す。流川が上になっているから、表情の細かい所までは分からない。だけど濡れた唇がキラリと光って、ドキッとしてしまう。

「流川、いきそ…」
「…オレもだ」

 流川が大きく突いた。昂ぶりを極めるために。また息がつまると同時に視界の焦点が合わなくなってくる。いつだってそうだ。流川を見つめていたいのに、こんな時に限って快楽が邪魔をして流川を見えなくする。嬉しいけど悔しい。そんな事をぼんやりと思っていると、腰に回した腕に震えが伝わって、流川が達することが近いのが分かった。
 イっても良い。そう思って腰に回した腕に力を込める。それさえも刺激になったのか、唇を噛み締めた流川は、なんとか声を出さないようにしたみたいだけど無理だったようだ。

「くっ…、サク…ラ…ギ」

 オレが目を見開いたのには気付かず、流川はそのまま達してしまった。熱い液体が、勢いよくオレの中に放たれる。この感じは嫌いじゃない。
 だけど、流川はやっぱり桜木しか見ていない。当たり前のことなのに、今更ながらに悔しく思う。悔しさに唇を噛み締めていると、いつの間にかオレの中から出ていた流川の手が、オレの中心に伸びていた。それから扱かれて、あっけなくオレは流川の手の中で達した。

 綺麗に筋肉のついた流川の体を見るのは好きだ。何故なら流川を独り占めできるから。誰にも邪魔されることのない、この時間が好きで好きで堪らない。だから今も全裸のままベッドに横たわって、身支度を整える流川を見つめる。ようやくオレの視線に気付いた流川はいつもの言葉を口にする。

「また…、来週来るから」

 ポツリとそう呟くように言う流川を、いつも律儀な奴だと感心して見ている。嬉しい筈なのに、変なところで天の邪鬼なオレは軽口を叩いてみせる。

「ハハッ。来週の今日にゃあ、もしかしたらお前と桜木、デキてるかもしんねぇのに。そんな約束したらいかんよ」
「…………仙道」
「どした?」

 ずっとオレを見つめていた流川は、オレから視線を外すと背中を向けて短く、「いや」と言った。続きを聞きたいと思ったけど、オレに言っているというよりも、自分自身に言っているように聞こえた。だから流川が言いかけたその言葉を聞く必要はないと思った。

「気を付けて帰れよ」
「…分かってる。じゃあな…」
「あぁ。じゃあな」

 流川の背中を見送った後、ドカリとベッドに俯せる。

「さぁ、どうしようか…」

 このまま流川を縛り付けておいても良いものか、どうなのか。オレは滅多に使わない頭を動かし考えた。
 さっき自分が流川に言ったこと。桜木とくっついているかもしれねぇってヤツ。正直、そうなってしまえば良いと思う。そうなってしまえば、オレの中でも踏ん切りがつくし、流川だって幸せになれる。
 だけど、やっぱりデキてほしくない。理由はただ一つ。流川のことが好きだから。
 流川はあぁ見えて真面目な人間だ。口先では悪態をつきながらも、きちんと相手のことを考えることの出来る、ある意味良い奴でも悪い奴でもある。そんな良い奴だから、余計に流川のことを好きと言うオレの方に振り向いて、流川が好きな桜木の所に行けなくなってしまう。でも流川には悪いけれど、まだまだ引く気はない。

「あ、やべ。もういい時間じゃん。そろそろ寝なきゃ」

 時計を見ればもう3時を回っている。今日は確か武里との練習試合があったな。さて体は動くだろうか。そんな心配をする前に寝てしまおうと思って瞼を閉じた。
 いつか、流川がオレのモノになっちゃえば良いのに。そう思いながら。

End

* 晴←花←流←仙になっていますが、本当は仙の後に、←牧or藤を入れようとしてストップ。入れたらあまりにもややこしくなりそうだったので(-“-;)
でも心意気は仙の後に、←牧or藤なんです。

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